動物実験処置の苦痛分類に関する解説

国立大学動物実験施設協議会
平成16年6月4日

はじめに

生命科学研究に動物実験は不可欠であるが同時に動物福祉の面からも適正な動物実験が実施されなければならない。今日,適正な動物実験の実施のため3Rの原則が確立されている。3Rの原則は,Russell & Burchによって1959年に提唱されたもので,動物実験の実施に際してReplacement(動物実験の他手段への置換),Reduction(使用動物数の削減),およびRefinement(麻酔,鎮痛剤の使用や実験技術・精度の向上による動物が受ける苦痛の軽減)のそれぞれRで始まる語に代表されることがらに十分配慮して動物実験を実施しようとするものである。すなわち,3Rの原則に則って動物実験を実施することが適正な動物実験実施につながるのである。

この中で,Refinementを検討するためには動物実験処置によって動物が受ける苦痛についての判断基準の検討が必要である。このため,1979年,動物実験処置に関する苦痛分類,Swedish Classification of Research Experimentsがスウェーデンで作成された。その後,北米の科学者の集まりであるScientists Center for Animal Welfare (SCAW)がスウェーデンの分類表をもとにCategories of Biomedical Experiments Based on Increasing Ethical Concerns for Non-human Speciesを作成した。このSCAWの苦痛分類は,「動物実験委員会の果たすべき役割に関する提言」(Laboratory Animal Science - Special Issue : 11-13, 1987)にも掲載されたことから,広く知られている。また,米国ではInstitute for Laboratory Animal Research( ILAR)がGuide to Types of Experiments That Are Considered Painful or StressfulをRecognition and Alleviation of Pain and Distress in Laboratory Animals (1992)のなかで紹介している。さらに米国農務省(USDA)も独自に分類を作成している。

しかし,SCAW, ILARおよびUSDAの分類の間には互いにいくつかの相違点がある。すなわち,SCAWの分類には対象動物として齧歯類,鳥類が含まれるが,USDAの分類ではそれらが含まれていない。また、SCAWの分類ではカテゴリーEの処置は禁止されているが,USDAの分類ではSCAWのカテゴリーEに相当する処置も実施可能である。このため,米国の多くの研究機関はSCAWの分類とILARの分類さらにUSDAの分類をもとに独自の苦痛分類表を作成し,自主的に遵守している。さらに,SCAWおよび ILARの分類はともに法的拘束力を持たないが, USDAの分類では,動物実験に使われた動物数の毎年の報告が義務とされている。米国以外では,カナダのカナダ動物管理協会(CCAC),またニュージーランドでは農務省(MAF)がSCAWの苦痛分類を修正した苦痛のカテゴリーを作成し,実験者が実験計画を作成する場合,実験処置がどの分類に属し,実施に際してはどのような対処をすべきかを判断する場合の参考資料としている。しかし,それらの分類を比較すると,同じ処置であっても分類の区分に違いが見られる。苦痛の分類方法に関して世界的に統一したものを作るという動きもみられたが,国による規制状況の違いや,国民性の違いにより,現状では困難であると結論されている。

わが国では統一された苦痛分類はないが,SCAWの苦痛分類に準拠しつつ各研究機関がそれぞれの状況に合わせた苦痛分類表を作成し,活用している例が多い。これは,久原(1990年)によってSCAWの和訳が紹介され1),また,それに基本的に準拠した分類の提案(2002年)2)や研究きゅう開委員会2000年12月に国立大学医学部長会議第8小委員会からSCAWの苦痛分類が一例として紹介されたことが関係していると思われる。一般に,動物実験における苦痛の評価は,動物が被る苦痛と研究成果とのバランスの観点から実験者自身が行い,さらにその妥当性を動物実験委員会が判断すべきでものである。しかし,さまざまな動物種への多様な実験処置に対する苦痛の程度を一律に分類・評価することは極めて困難である。

ここでは一資料としてSCAWの苦痛分類の解説を行い,一部既報の和訳についても変更を加えた。この資料の目的は,実験者自身が実験処置によって動物が受ける苦痛の程度を自己評価し,動物の受ける苦痛について理解を深めること,及び動物実験委員会が実験計画の審査の上で苦痛の程度を評価する際の参考とすることである。近年,動物実験の方法や周辺科学領域の発展から,苦痛分類の判断に苦慮する処置例も少なくない。このため,特に,カテゴリー CとDの実験処置については判断のための概念的説明にとどめたものもある。言うまでもなく,苦痛分類についての判断は科学や社会の発展に伴い見直され,その時代ごとに適正なものにされなければならない。本資料が適正な動物実験実施の一助になれば幸いである。

1):動物委員会および動物実験計画(プロトコール)審査システム 久原孝俊 アニテックス 第2巻5号 16-31 (1990).
2):苦痛による生命科学実験分類 黒澤努,大谷若菜。Altern. Animal. Test. Experiment. 8(3-4), 113-121 (2002).


倫理基準による医学生物学実験処置に関する分類

SCAWのカテゴリーA:

生物個体を用いない実験あるいは植物,細菌,原虫,又は無脊椎動物を用いた実験。
Experiments involving either no living materials or use of plants, bacteria, protozoa, or invertebrate animal species.

生化学的研究,植物学的研究,細菌学的研究,微生物学的研究,無脊椎動物を用いた研究,組織培養,剖検により得られた組織を用いた研究,屠場から得られた組織を用いた研究(解説1)。発育鶏卵を用いた研究(解説2)。無脊椎動物も神経系を持っており,刺激に反応する。従って無脊椎動物も人道的に扱われなければならない。

Biochemical, botanical, bacteriological, microbiological, or invertebrate animal studies, tissue cultures, studies on tissues obtained from autopsy or from slaughterhouse, studies on embryonated eggs. Invertebrate animals have nervous systems and respond to noxious stimuli, and therefore must also be treated humanely.

(解説1)生化学的研究,植物学的研究,細菌学的研究,微生物学的研究,無脊椎動物を用いた研究,組織培養,剖検により得られた組織を用いた研究,屠場から得られた組織を用いた研究。

動物実験を規制するわが国の法律では,規制対象動物を爬虫類以上としている。そのためこれらの研究に関する実験計画書は動物実験委員会の審査対象外である。しかし,動物福祉の観点からは動物実験に代わる代替法を考慮する必要があり,もし動物を用いずに実験目的を達成できる場合には,これらの方法を考慮すべきである。また,他の研究者が実験に用いた安楽死後の動物の器官や組織を共有することは,動物の使用数を減らすことにつながるので望ましい。

(解説2)発育鶏卵を用いた研究。

発育鶏卵を使用する場合には,もし孵化が実験に必要でないならば,卵は孵化の前に破壊されなければならない。孵化させる場合には苦痛のカテゴリーはB以上となる。

なお,胎児の実験についてはSCAWの分類に記されていないが,胎児の苦痛やストレスについては判断の分かれるところである。イギリスのAnimals (Scientific Procedures) Act 1986では妊娠期間の半分を越えた場合,動物個体として同等に扱っている。

SCAWのカテゴリーB:

脊椎動物を用いた研究で,動物に対してほとんど,あるいはまったく不快感を与えないと思われる実験操作。
Experiments on vertebrate animal species that are expected to produce little or no discomfort.

実験の目的のために動物をつかんで保定すること。あまり有害でない物質を注射したり,あるいは採血したりするような簡単な処置。動物の体を検査(健康診断や身体検査等)すること(解説3)。深麻酔下で処置し,覚醒させずに安楽死させる実験(解説4)。短時間(2〜3時間)の絶食絶水(解説5)。急速に意識を消失させる標準的な安楽死法。例えば,麻酔薬の過剰投与,軽麻酔下あるいは鎮静下での頸椎脱臼や断首など(解説6)。

Mere holding of animals captive for experimental purposes; simple procedures such as injections of relatively harmless substances and blood sampling; physical examinations; experiments on completely anesthetized animals which do not regain consciousness; food/water deprivation for short periods (a few hours) ; standard methods of euthanasia that induce rapid unconsciousness, such as anesthetic overdose or decapitation preceded by sedation or light anesthesia.

(解説3)実験の目的のために動物をつかんで保定すること。あまり有害でない物質を注射したり,あるいは採血したりするような簡単な処置。動物の体を検査すること。

動物診療所において通常行われる診断・治療処置と同等の処置。例えば,健康診断のための最小限度の拘束。薬物の投与などの注射,採血。脳波,心電図,筋電図の測定などがある。

(解説4)深麻酔下で処置し,覚醒させずに安楽死させる実験。

外科的手術を伴う非存命実験などが該当し,処置中,処置後に意識が回復しない実験。使用する麻酔薬は,動物種に合った適切なもので,現在の医療あるいは獣医療で一般的に使われてるものとする。なお,多くの麻酔薬は要指示薬として、劇薬、毒薬及び向精神薬の指定を受けている物もあり、適切な管理が薬事法により求められていることにも留意する。以下に一般に使われる麻酔薬を示す。この他にも関連書を参考にして、新しい技術や試薬についての知識を得ることにつとめることが必要である。

動物実験に使用される代表的な麻酔薬(例)

  麻酔薬 投与量(mg/kg)* 備考
注射麻酔薬 バルビツール酸系
 ペントバルビタールNa
 チオペンタールNa
マウス,ラット 30-40(i.p.,i.v.),
ウサギ,イヌ,ネコ 5-10(i.v.)
迷走神経興奮作用があるので,
抗コリン剤との併用必要。
鎮静作用は強いが
麻酔・筋弛緩作用は弱い。
解離性麻酔薬
 塩酸ケタミン
マウス,ラット 50-60(i.p.,i.v.)
イヌ,ネコ 25(i.v.)
マウス,ラット,ウサギ 80-90(i.m.)
イヌ,ネコ 10-30(i.m.)
吸入麻酔薬 エーテル マウス,ラット 5-10%
イヌ,ネコ 3-5%
引火性のため換気に注意。
粘膜刺激作用強い。
鎮痛作用は強いが,麻酔・筋弛緩作用が
弱いので他剤との併用が必要。
筋弛緩作用,鎮痛作用が弱い。
心筋のカテコールアミンに対する
感受性の増大作用。
連用時の肝毒性作用あり。
笑気 ハロセン 笑気50-70% + 酸素50-30%
導入時 2-4%3-5%
維持 0.5-1.5%
麻酔前投薬 向精神薬
 ベンゾジアゼピン系
 ジアゼパム
 フェノチアジン系
 クロルプロマジン
 キシラジン
マウス,ラット,ネコ 1-2(i.m.)
イヌ2-5 (i.m.)
マウス,ラット,イヌ,ネコ 1-3(i.m.)
鎮痛,筋弛緩作用が強い。
抗コリン剤
 アトロピン
イヌ,ネコ 1-3 (i.m.) 鎮静作用強い。
マウス,ラット0.3-0.5(i.m.,i.p.)
イヌ,ネコ0.03-0.05(i.m.)
鎮静,鎮痛,筋弛緩作用あり。
嘔吐を惹起することがあるので
抗コリン剤との併用必要
麻酔薬投与時,気管カニューレ挿入時の
迷走神経興奮遮断

註)*投与量は,マウス,ラット,ウサギ,イヌ,ネコを中心に記載した。
 i.p. : 腹腔内投与,i.v. : 静脈内投与,i.m. : 筋肉内投与。
「日本実験動物学会動物実験に関する指針:解説」,ソフトサイエンス社,1991より。

(解説5)短時間(2〜3時間)の絶食絶水。

SCAWの分類では2〜3時間(a few hours)となっているが,動物種によって代謝時間が異なることから,許容される絶食・絶水時間の長さを一律に定めることはできない。麻酔の前処置あるいは血清生化学検査のための採血等のために10数時間程度までの絶食(水は自由摂取)を行うことは認められる。また,マウス,ラット,ウサギのように麻酔による嘔吐をほとんど無視できる動物では,麻酔の前処置としての絶食は必要がない。なお,長時間の絶水は,絶食以上に動物の生理状態や代謝に影響することから特に注意を要する。

(解説6)急速に意識を消失させる標準的な安楽死法。例えば,麻酔薬の過剰投与,軽麻酔下あるいは鎮静下での頸椎脱臼や断首など。

深麻酔下での放血やKCl等の投与は,安楽死法として認められる。齧歯類の頸椎脱臼は,熟練者が行う場合は無麻酔でも認められる。

安楽死の方法は動物種によって異なるが,米国獣医師会(AVMA)の2000 Report of the AVMA Panel on Euthanasia が多くの国において参照されている。それによると安楽死法の評価基準として以下のような項目が示されている。

なお,安楽死の方法としては,以下のような方法がある。詳細については関連書を参照のこと。

動物種 バルビツレイト
静脈内注射
炭酸ガス吸入 頸椎脱臼 断首 煮沸
マウス +1)  
ラット +1)  
モルモット +2)      
小型げっ歯類 +1)  
ウサギ +2)      
イヌ      
ネコ      
サル類      
トリ類 +2)      
その他の家畜      
下等脊椎動物無脊椎動物       + +

注1):腹腔内でもよい。2):心臓内でもよい。
「実験動物の飼養及び保管等に関する基準の解説」,ぎょうせい,1980より一部抜粋。

SCAWのカテゴリーC:

脊椎動物を用いた実験で,動物に対して軽微なストレスあるいは痛み(短時間持続する痛み)を伴う実験。
Experiments that involve some minor stress or pain (short-duration pain) to vertebrate animal species.

麻酔下で血管を露出させること,あるいはカテーテルを長期間留置すること(解説7)。行動学的実験において,意識ある動物に対して短期間ストレスを伴う保定(拘束)を行うこと(解説8)。フロインドのアジュバントを用いた免疫(解説9)。苦痛を伴うが,それから逃れられる刺激(解説10)。麻酔下における外科的処置で,処置後も多少の不快感を伴うもの(解説11)カテゴリーCの処置は,ストレスや痛みの程度,持続時間に応じて追加の配慮が必要になる。

Exposure of blood vessels or implantation of chronic catheters with anesthesia; behavioral experiments on awake animals that involve short-term stressful restraint; immunization employing Freund's adjuvant; noxious stimuli from which escape is possible; surgical procedures under anesthesia that may result in some minor post-surgical discomfort. Category C procedures incur additional concern in proportion to the degree and duration of unavoidable stress or discomfort.

(解説7)麻酔下で血管を露出させること,あるいはカテーテルを長期間留置すること。

これらの処置を行うに当たっては,術後の感染防止に配慮する。処置後に動物の意識を回復させない実験はカテゴリーBに含まれる。麻酔から覚醒後もカテーテルを留置させる場合には,解説11を参照。

(解説8)行動学的実験において,意識ある動物に対して短期間ストレスを伴う保定(拘束)を行うこと。

ストレスが生体に及ぼす影響を調べるための実験。例として,拘束ストレス負荷後の血中ホルモン濃度の変化の測定。モンキーチェアやボールマンケージを用いる実験はこれに該当し,拘束器具への馴化,拘束期間中の監視あるいは頻繁な観察,実験の中断や終了時期の判断に特に配慮すべきである。情動的反応が高い霊長類などにおいては特に注意を要する。

(解説9)フロインドのアジュバントを用いた免疫。

SCAWの分類ではフロインドのアジュバントを使用する実験はカテゴリーCとしているが,コンプリートアジュバント(FCA)は動物が被る苦痛が大きいことから最近ではCCACの分類も含めカテゴリーDとしているところが多い。FCAのフットパッドへの接種は苦痛が大きいことから避けるべきである。インコンプリートアジュバントを使用する実験はカテゴリーCである。FCA以外のより苦痛の低いアジュバントの選択も考慮する。

(解説10)苦痛を伴うが,それから逃れられる刺激。

これらに該当する実験には麻酔薬や鎮痛薬の効果を調べるためのテイルフリック試験,ホットプレート試験,電気ショックを用いたフリンチジャンプ試験,つまみ試験などが含まれる。このような試験において動物に与える苦痛は効果を判定出来る最小限の苦痛でかつ,必要最小の時間で行うように制限する。例えば,ホットプレート試験では温度を50度以上にする必要があるが,動物の足組織の損傷を避けるために上限は70度以下とする等が一つの目安と考えられる。この種の実験のポイントは,苦痛を起こす刺激からの回避が可能なことである。実験装置の不具合等により刺激からの回避が不可能になると,実験の目的以外の苦痛を強いるので特に注意が必要である。

(解説11)麻酔下における外科的処置で,処置後も多少の不快感を伴うもの。

例として,処置後の苦痛の程度が軽微な開腹手術,開胸手術,開頭手術,整形外科的手術が該当する。術後管理に配慮すべきであり,特にイヌ,ネコ,霊長類等においては,通常の臨床獣医学的な術後管理を目指すべきである。

体内に電極等の器具を埋め込む場合にも,麻酔下で無菌的に行われなければならない。術後の苦痛あるいは感染症を予防するために鎮痛剤や抗生物質の投与が考慮されるべきである。

麻酔薬,鎮痛剤および鎮静剤の選択と投与量は,動物種によって異なるため,その動物種に適したもの,さらに実験の目的に適したものを使用する。同じ処置であっても,動物種,処置部位・程度,術者の経験,術後管理等により動物が被る苦痛は異なり,処置後の不快感の判断についても非常に難しい。そのため行おうとする処置がカテゴリーCに属するかDに属するかは判断の分かれるところであり,各機関の委員会で動物が被る苦痛と研究成果のバランスにもとづいて判断することとなる。

SCAWのカテゴリーD:

脊椎動物を用いた実験で,避けることのできない重度のストレスや痛みを伴う実験。
Experiments that involve significant but unavoidable stress or pain to vertebrate animal species。

行動面に故意にストレスを加え,その影響を調べること(解説12)。麻酔下における外科的処置で,処置後に著しい不快感を伴うもの。苦痛を伴う解剖学的あるいは生理学的欠損あるいは障害を起こすこと(解説13)。苦痛を伴う刺激を与える実験で,動物がその刺激から逃れられない場合(解説14)。長時間(数時間あるいはそれ以上)にわたって動物の身体を保定(拘束)すること(解説15)。本来の母親の代わりに不適切な代理母を与えること(解説16)。攻撃的な行動をとらせ,自分自身あるいは同種他個体を損傷させること(解説17)。麻酔薬を使用しないで痛みを与えること。例えば,毒性試験において,動物が耐えることのできる最大の痛みに近い痛みを与えること。つまり動物が激しい苦悶の表情を示す場合。放射線障害をひきおこすこと。ある種の注射,ストレスやショックの研究など(解説18)。カテゴリーDに属する実験を行う場合には,研究者は,動物に対する苦痛を最小限のものにするために,あるいは苦痛を排除するために,別の方法がないか検討する責任がある。

Deliberate induction of behavioral stress in order to test its effect ; major surgical procedures under anesthesia that result in significant post-operative discomfort; induction of an anatomical or physiological deficit that will result in pain or distress; application of noxious stimuli from which escape is impossible; prolonged periods (up to several hours or more) of physical restraint; maternal deprivation with substitution of punitive surrogates; induction of aggressive behavior leading to self-mutilation or intra-species aggression; procedures that produce pain in which anesthetics are not used, such as toxicity testing with death as an end point; production of radiation sickness, certain injections, and stress and shock research that would result in pain approaching the pain tolerance threshold, i.e. the point at which intense emotional reactions occur. Category D experiments present an explicit responsibility on the investigator to explore alternative designs to ensure that animal distress is minimized or eliminated.

(解説12)行動面に故意にストレスを加え,その影響を調べること。

行動ストレスとして,強制走行,強制水泳,あるいは運動制限(半重力下の懸垂実験)などが相当し,ストレスの効果として筋肉の解剖学的あるいは生理学的変化をみる実験などが該当する。睡眠行動や食餌行動を変化させ,その効果をみる実験においても,重度のストレスや痛みを伴う実験であれば該当する。動物が被るストレスは実験目的を達成するために必要最小限のものとする。

(解説13)麻酔下における外科的処置で,処置後に著しい不快感を伴うもの。苦痛を伴う解剖学的,生理学的欠失あるいは障害を起こすこと。

処置後の苦痛の程度が顕著な開腹手術,開胸手術,開頭手術,整形外科的手術が該当する。解説11にも記したが,カテゴリーCの麻酔下における外科的処置で,処置後も多少の不快感を伴うものとの区別がつきにくい。また,同じ個体に対してこのような処置を複数箇所に加えることは慎むべきである。しかし,実験者によってその正当性が説明され,かつ,動物実験委員会がそれを承認すれば,その実施を認めてもよい。

(解説14)苦痛を伴う刺激を与える実験で,動物がその刺激から逃れられない場合。

例として,痛みの研究に関する実験があげられる。これに関しては解説10及び12を参照されたい。また,腫瘍細胞の移植,毒性試験のための化学物質の投与,感染実験,遺伝子改変動物を含む重篤な疾患モデル動物の作出もこの中に含まれる。それらに関しては解説18も参照されたい。さらに,環境中の重力の場,照明,騒音,温度,湿度,大気圧,酸素などを変更する実験もその環境から逃れられないという点でこの中に含まれる。ただし,それにより重度な痛みやストレスが生じなければカテゴリーDに相当しない。

(解説15)長時間(数時間あるいはそれ以上)にわたって動物の身体を保定(拘束)すること。

例えば,モンキーチェアやボールマンケージを用いる実験はこれに該当する。長期にわたる拘束は避けるべきであるが,動物を長期間にわたり拘束しなければならない場合には,摂餌水,排泄など動物にとって生物学的に必要な行動を可能とさせ,動物種によっては適度な運動を与えるべきである。 拘束器具への馴化,拘束期間中の監視あるいは頻繁な観察,実験の中断や終了の時期の判断に特に配慮し,拘束による障害が見られる場合には,動物を拘束器具から解放するか,あるいは拘束方法を改善しなければならない。

(解説16)本来の母親の代わりに不適切な代理母を与えること。

マウス,ラット,ウサギ等ではそれらのSPF化にあたり,代理母を与えることは一般に行われており,カテゴリーDには相当しない。しかし,この処置は,緊密かつ長期間の親子関係を構築する霊長類において,特に配慮が必要である。

(解説17)攻撃的な行動をとらせ,自分自身あるいは同種他個体を損傷させること。

動物の中枢神経系を傷害するような研究において,自分自身あるいは同種同居個体を損傷させるような攻撃的行動を取ることが考えられる。そのような実験では,処置後の動物を十分に観察し,飼育方法についても特別な注意を払う必要がある。

(解説18)麻酔薬を使用しないで痛みを与えること。例えば,毒性試験等において,動物が耐えることのできる最大の痛みに近い痛みを与えること。つまり動物が激しい苦悶の表情を示す場合。放射線障害をひきおこすこと。ある種の注射,ストレスやショックの研究など。

放置すれば死に至るような発癌実験あるいは腫瘍の移植実験,感染実験,重篤な病気の疾患モデル動物(遺伝子改変動物を含む)を用いた実験などもカテゴリーDに含まれる。このような実験においては,できるだけ早い時期をエンドポイントにして,動物が被る苦痛やストレスを最小限に抑えるべきである。頻繁な観察により苦痛の徴候を判断し,実験目的の範囲で苦痛軽減の処置や安楽死を施す。例えば,腫瘍が体重の10%を超えた場合,2−3日の間に20%以上の体重減少あるいは7日で25%以上の体重減少が予想される場合に,安楽死を考慮すべきである。それができない場合には,実験の正当性を実験計画書に詳述する必要がある。

実験処置により受ける動物の苦痛について,生理学的反応等から動物はヒトに比べて感受性が低いとする考え方がある。一方,動物が感じる苦痛の程度はヒトが感じる苦痛の程度と同程度であるとみなして判断しようとする考え方もある。このため,カテゴリーCまたはDの判断については,実験処置の必要性や代替手段の有無,苦痛軽減のための配慮,研究の社会的意義などについて,研究者は十分な説明を行い,委員会はその妥当性を判断しなければならない。

SCAWのカテゴリーE:

麻酔していない意識のある動物を用いて,動物が耐えることのできる最大の痛み,あるいはそれ以上の痛みを与えるような処置。
Procedures that involve inflicting severe pain near, at, or above the pain tolerance threshold of unanesthetized, conscious animals.

手術する際に麻酔薬を使わず,単に動物を動かなくすることを目的として筋弛緩薬あるいは麻痺性薬剤,例えばサクシニルコリンあるいはその他のクラーレ様作用を持つ薬剤を使うこと(解説19)。麻酔していない動物に重度の火傷や外傷をひきおこすこと(解説20)。精神病のような行動をおこさせること(解説21)。家庭用の電子レンジあるいはストリキニーネを用いて殺すこと(解説22)。避けることのできない重度のストレスを与えること。ストレスを与えて殺すこと(解説23)。カテゴリーEの実験は,それによって得られる結果が重要なものであっても,決して行ってはならない。カテゴリーEに属する大部分の処置は,国の方針によって禁止されており,したがって,これを行った場合は,国からの研究費は没収され,そして(または)その研究施設の農務省への登録は取り消されることがある(解説24)。

Use of muscle relaxants or paralytic drugs such as succinyl choline or other curariform drugs used alone for surgical restraint without the use of anesthetics; severe burn or trauma infliction on unanesthetized animals; attempts to induce psychotic-like behavior; killing by use of microwave ovens designed for domestic kitchens or by strychnine; inescapably severe stress or terminal stress. Category E experiments are considered highly questionable or unacceptable irrespective of the significance of anticipated results. Many of these procedures are specifically prohibited in national policies and therefore may result in withdrawal of federal funds and/or institutional USDA registration.

(解説19)手術する際に麻酔薬を使わず,単に動物を動かなくすることを目的として筋弛緩薬あるいは麻痺性薬剤,例えばサクシニルコリンあるいはその他のクラーレ様作用を持つ薬剤を使うこと。

筋弛緩薬は,全身麻酔などの適切な処置が施されていなければ使用してはならない。筋弛緩薬だけを用いて動物を不動化することは認められない。これらの薬剤が麻酔薬と併用して使用される場合には,麻酔の深度が適切に保たれるように注意しなければならない。

(解説20)麻酔していない動物に重度の火傷や外傷をひきおこすこと。

SCAWの分類では麻酔していない動物に重度の火傷や外傷をひきおこすことは禁じられている。しかし,処置中,必要なら処置後に麻酔や鎮痛薬を投与して行うことは許される。ただしその際にも,十分な正当性があり,委員会の承認が必要となる。

(解説21)精神病のような行動をおこさせること。

イヌ,ネコ,霊長類などの高度の情動反応を示す動物に対して極度のストレスを加えることにより,精神病のような行動をおこさせる実験は止めるべきである。精神病モデルはラット等を用いることが多いが,イヌ,ネコ,霊長類などを使用しなければならない場合は,実験者によってその正当性が提示され,動物実験委員会が,動物が被る苦痛と研究成果のバランスをもとにその正当性を確認すべきである。

(解説22)家庭用の電子レンジあるいはストリキニーネを用いて殺すこと。

小動物の安楽死のために専用の電子レンジが開発されているが,我が国では一般的でない。

硝酸ストリキニーネあるいは空気栓塞により動物を殺処分することは,実験動物の飼養及び保管等に関する基準の解説(ぎょうせい,1980)にも記されているように禁止されている。

(解説23)避けることのできない重度のストレスを与えること。ストレスを与えて殺すこと。

動物を叩いたり,押しつぶしたりして殺すこともこの中に含まれる。動物を殺処分する場合にはわが国で認められている安楽死法を用いる。安楽死法に関しては解説6を参照のこと。

(解説24)カテゴリーEの実験は,それによって得られる結果が重要なものであっても,決して行ってはならない。カテゴリーEに属する大部分の処置は,国の方針によって禁止されており,したがって,これを行った場合は,国からの研究費は没収され,そして(または)その研究施設の農務省への登録は取り消されることがある。

SCAWの分類では,「カテゴリーEの実験は米国の方針で禁止されている」となっているが,SCAWの分類が掲載されている論文(Consensus Recommendation on Effective Institutional Animal Care and Use Committees:資料1参照)では,カテゴリーEの処置については各研究機関で独自の方針を持つことが望ましいとされ,カテゴリーEの実験であっても研究機関の動物実験委員会が正当性を認めれば実施することも可能であると理解される。 実際に,USDAの年次報告にもカテゴリーEの実験が行なわれていることが示されている。

資料1 参考文献

Consensus Recommendations on Effective Institutional Animal Care and Use Committees
(Laboratory Animal Science, Special Issue pp.11-13. Jan. 1987)

資料2 関連資料

I. わが国の法律・基準・指針

II. 苦痛分類

III. 苦痛・疼痛・ストレス

IV. 麻酔・鎮痛

V. エンドポイント

VI. 抗体作成

VII. 拘束・絶食・絶水

VIII. 行動実験

IX. 安楽死

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